【深夜の電話】

「主人が……帰ってこないんです」

深夜、私の携帯に転送されたその声は、今も耳に残っています。
震える声の主は、かつて経営セミナーで知り合った建築会社社長の奥様でした。
“派手だけど根は真面目”──そんな印象だった彼の名を聞いて、胸がざわついたのを覚えています。

そして一週間後、異臭の通報を受けたレンタルボックスの中で、彼は発見されました


【沈黙の空間】

そのレンタルボックスは、幅も高さも1.8メートル。
ぎゅうぎゅうに詰め込まれた段ボール、タイヤ、ゴルフクラブ。
そして、その隙間に――彼はダンボールに身体を預けるように、座る形で亡くなっていました。

顔は穏やかでした。
けれど床には、染み込んだ体液が濃く黒く広がっていました。
練炭の燃えたあとの匂いと、沈黙だけが支配する、異様な空間でした。


【1億円の投資──取り返しのつかない選択】

会社の売上は3億円。
でも、業績は芳しくなかったといいます。
彼はFXに手を出し、最初は自分の資金、やがて会社のお金にも手をつけ、1億円近くを失いました

「FXで損したら自己破産できない」
そんな誤解を信じ、追い詰められていった――。
あとで奥様がそう教えてくれました。

「死ねばチャラになる」
本当に、そう思ってしまったのでしょうか。


【怒りに変わった悲しみ】

娘さんは大学を卒業したばかり。
奥様は、最初のうちは憔悴しきっていましたが、
片づけが進み、現実を受け入れるにつれ、やがて怒りがこみ上げてきました。

「どうして、私たちを残して勝手に死ねるの……」

その言葉に私は返す言葉を失いました。
遺された人は、悲しみよりも“怒り”を感じることがあります。
突然、感情の置き場所を奪われるのです。


【最期にのこした“沈黙の叫び”】

レンタルボックスに残されていたゴルフクラブや書類は、
「過去の成功」と「壊れた誇り」を象徴するかのようでした。

練炭を用意し、狭い空間に身を運び、火をつける。
その間、彼は何を考えていたのでしょうか。
顔を上げると、天井はわずか10cmほど。
まるで、自分で自分を封じ込めるような、自殺空間。

それでも、どこか未練があったのか。
手には娘の写真が握られていた──
そんな話を、奥様から後に聞きました。


【まとめ:清掃人として、ひとつだけ伝えたい】

「楽に死にたいんです」
そんな電話を、私の会社にもたまに受けます。
そして、話を聞いてみると多くがFXや借金の失敗

でも――伝えたい。

破産は人生の終わりじゃない。
死を選ばなくても、やり直せる。
命を絶つ前に、誰かに話してほしい。

私が清掃を終えてトラックに戻ると、奥様と娘さんが深く頭を下げていました。
「お疲れさまでした」と声をかけた瞬間、私はようやく涙がこみ上げてきました。

彼はもう何も言えません。
だからこそ、代わりに私が伝えたいんです。

なんとかなる!

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